導入:中東情勢の急変とエネルギー大動脈の危機
2026年3月現在、中東情勢は極めて緊迫した状況に陥っています。米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃に対し、イランの精鋭部隊であるイスラム革命防衛隊(IRGC)が報復として、ホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。革命防衛隊幹部は「海峡は閉鎖されており、通過しようとする船舶はすべて炎上させる」と警告を発し、世界のエネルギー供給に深刻な打撃を与えています。
ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ狭い水路で、世界の原油輸送量の約20%が通過する要衝です。日本は原油輸入の9割以上を中東に依存しており、その多くがこの海峡を経由します。事実上の封鎖状態により、原油価格は急騰し、ガソリン価格の上昇が現実味を帯びています。この記事では、最新の情勢を基に、日本への影響を詳しく解説します。

ホルムズ海峡封鎖の背景:イラン革命防衛隊の強硬姿勢
イランは2026年2月28日、米国・イスラエル連合軍の攻撃を受け、最高指導者ら要人が犠牲となりました。これに対する報復として、革命防衛隊はホルムズ海峡周辺で船舶への威嚇・攻撃を開始。3月2日には幹部が公に封鎖を主張し、タンカー3隻への攻撃を表明しました。
米中央軍は「海峡は閉鎖されていない」と否定していますが、海上保険料の高騰や船舶会社の自主回避により、事実上の封鎖状態となっています。周辺には150隻以上のタンカーが停泊し、航行が大幅に制限されています。
イランにとって封鎖は「焦土型カード」ですが、自国輸出も止まるため長期継続は難しいとの見方もあります。しかし、部分的な妨害でも原油供給は混乱します。
原油価格の急騰:WTI・ブレントの最新動向
封鎖宣言直後、国際原油市場は急変しました。北海ブレント先物は一時82ドル台、WTI原油先物は75ドル台まで上昇(2026年3月2日時点でブレント約79-80ドル、WTI約72ドル前後)。これは攻撃前の水準から10-15%以上の上昇です。
過去の事例(2019年タンカー攻撃や2022年ウクライナ危機)では、供給不安で価格が急騰しました。今回も、ホルムズ海峡経由の原油が日量約2000万バレル(世界消費の20%)に及ぶため、需給逼迫が避けられません。最悪の場合、ブレントが90-130ドルを超える可能性も指摘されています。
日本では、政府・民間備蓄が254日分あり、即時的な供給途絶はありませんが、価格高騰は避けられません。
日本への直接影響:ガソリン値上げと電気・ガス代の高騰
日本は原油輸入の約74%がホルムズ海峡経由です。封鎖が長期化すれば、ガソリン価格は全国平均で200円超えの可能性があります。野村総研の試算では、原油87ドルでガソリン約200円、130ドルで328円まで跳ね上がる恐れがあります。暫定税率廃止の効果は消失し、家計負担が増大します。
さらに、LNG価格も連動上昇。電気・ガス料金は夏頃から1割超の上昇が見込まれ、物流費や製造コストの高騰で食品など幅広い品目が値上がりします。スタグフレーション(物価高+景気停滞)のリスクが高まっています。
第一生命経済研究所の試算では、原油130ドルで実質GDPが1年目に0.58%、2年目に0.96%押し下げられる可能性があります。
海運業界の対応と株価動向:商船三井・日本郵船・川崎汽船
日本海運大手3社(商船三井、日本郵船、川崎汽船)は、イラン側から「通航禁止」の通告を受け、ホルムズ海峡航行を停止。ペルシャ湾内の船舶を安全海域に待機させています。日本船主協会は対策本部を設置し、乗組員安全を最優先にしています。
一方で、運賃上昇期待から海運株は上昇。商船三井株は一時新高値、川崎汽船は6%高、日本郵船も4%高となりました。短期的に収益押し上げが見込まれますが、長期化すれば稼働停止コストや保険料負担が増大します。
エネルギー企業への影響:INPEX株価と原油高の恩恵
INPEXをはじめとするエネルギー企業は、原油高で恩恵を受けています。INPEX株は一時10%超上昇し、上場来高値を更新。国内備蓄があるため供給面の懸念は限定的ですが、価格上昇が業績を支えます。
スエズ運河との比較:迂回ルートの限界
代替ルートとしてスエズ運河が挙げられますが、ホルムズ封鎖時はアフリカ周りとなり、輸送日数が倍増・コスト急増します。過去の紅海危機でも同様の問題が発生しました。
まとめ:日本経済の試練と今後の展望
ホルムズ海峡封鎖は、日本にとってエネルギー安全保障の危機です。ガソリン値上げ、電気代上昇、物流混乱が家計・企業を直撃し、スタグフレーションの引き金となる恐れがあります。政府は備蓄活用や補助金継続を検討中ですが、根本解決には中東情勢の早期沈静化が必要です。
読者の皆さんも、省エネや情報収集を心がけましょう。情勢は刻々と変化しますが、冷静な対応が重要です。